沈む前の太陽の日差しが強く部屋の熱量を上げる。エアコンの無いサウナの様な蒸し暑い資料室のドアを全開にし、部長に頼まれた資料をただ黙々と集めていた。
「えーっと、これは確かこの辺りに…… 」
最後に探していた資料は棚の上の方にあり、踏み台を部屋の端に置いてきてしまった事を後悔する。
つま先立ちすればなんとか届かない距離でもないが、ぐんと手を伸ばしてもあとちょっとが足りない。この“ちょっと”に踏み台をわざわざ持ってくるのがなんだが悔しくて、執拗に手を伸ばし続けた。
別に何かと競争しているわけでもなんでもないけど、突然自分ルールみたいなものを作ってしまうことがある。
「もう少しなんだけどな」そうボソッと呟きもう一度手を伸ばした時、後ろからスッと伸びてきた手がそれを難無く取り上げてくれた。
「これで良かったか?」
肩がビクッと震え、声にならない声を瞬間飲み込んだ。
開けっ放しのドアから誰かが入って来ようと自由だし問題はない。けれど、音もなく背後に人がいたらさすがに驚く。
「驚かせたようですまない」
「い、いいえ、大丈夫です」
資料を受け取りながら改めて見るその人は、背が高くスーツを着ててもわかるほどガタイが良さそうに見えた。
その人は私に資料を渡すと、足元に広がっている資料に目を向け「これ全部1人で運ぶのか?」と聞き、私がそうだと答えるとその中で1番重そうな箱を運んでくれると言う。
「そんな、お客様に運んでもらうなんて申し訳ないですし、これくらい1人で大丈夫ですので」
「客…… と言うとちょっと語弊があるな」
語弊があるとはどういうことなのか?同庁の人って事なのかな?そんな疑問が頭の中でぐるぐる廻る。断っても退いてくれないこの場をどうしたものかと愛想笑いで誤魔化していると、丁度、廊下の方からその人らしき人を呼ぶ声がした。
「ちょっと、真田君なにやってんの! 行くよ」
どれくらい探していたのか分からないけど、開けっ放しのドアからやれやれと言った感じで少し年配の方が顔を出し手招きする。
真田君と呼ばれていたその人と目が合うと「すまない」と一言残し資料室を後にした。手伝えなかった事に対しての謝罪などする必要もないのに、と、その広い背中を見送りながら思っていた。
死に損ないの流星群-01-/201807